禁煙94日 禁煙で出会えた笑顔
私の生徒にMさんという人がいる。40代半ばの男性。Mさんは脳梗塞で半身が不自由だ。杖でゆっくりゆっくり歩く。何をやるのもゆっくりゆっくり。でもいつも、ニコっというかニヤっというか、独特の笑顔を浮かべている。その笑顔で、なんともおかしみのある話をする。
だから、Mさんはクラスメイトにとても大切にされている。MさんのペースでMさんと一緒に教室を移動する。自分も足が不自由な人がMさんのカバンを持ってあげる。
しかし、当初、入校選考でMさんを合格させるかどうかについては、上司の間でとても議論になったようだ。ペーパーテストの成績が思わしくなかった。あまり授業についていけないようだと、その人自身がかわいそうなことになる。だから、本来だったら不合格のはずだった。そこを私の上司が面接をやった感触から、入れたい、自分が面倒をみるから、といって合格にしたらしいのだ。
上司は人を見る目があった。Mさんは今や、クラスメイトの熱い支持を受けて、学級委員長もやっている。
そんなMさん、先生という立場からすると、正直大変に思うときもある。脳の方にも問題があるらしく、見本どおりの文章をうつことも困難だ。彼専用にもう一人先生がいたらいいなぁ、と思うときもあった。
でも、どうしても憎めない、おかしみのある人なのだ。教えていてイライラしてこないのだ。彼のペースにのまれて、しかもそれが心地よかったりする。
そんなMさん、私がタバコをやめたことにいち早く気づいた。
「(ニヤリ)、先生(ニヤリ)、最近タバコ吸ってないでしょ(ニヤリ)」
この「ニヤリ」は禁煙してからの私の宝物の一つになった。
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